=========== 第一回 Cobaltな日々をすごしませんか? Cobalt Users Group 安田 豊 yasuda@cobaltqube.org ネットワークサーバを構築したいけど、そのために必要な技術を習得する時間 なんかあるわけない!という人にとって、Cobalt 社のマイクロ・ネットワーク サーバ製品は、まったく素晴らしい贈りものになるでしょう。 Cobalt は非常に小さくまとめられた、超小型ネットワークサーバです。 Cobaltの最大の特徴は、その運用の簡単さでしょう。電源を入れて15分(掛け値 無しの15分)で、一台の完全なネットワークサーバとして機能しはじめます。 提供されるネットワークサービスはざっとWWW, email, DNS, ftp にはじまり、 MacとWindowsそれぞれに対応したファイルサーバ機能(AppleShare, SMB)などです。 設定はすべてWeb経由の簡単操作でOKです。WWWサービスではCGIも可能で、 スクリプトにはperl 以外に C や Shell Script も使えます。 本当は製品の詳細やUsers Groupのことを書くべきなのかも知れませんが、今回は パスして、僕たちの「動機」について書こうと思います。 □ 何故僕たちはCobaltを愛するようになったか 端的に言って、それは何故か?やっぱりデザインが良いからでしょう。 サーバのデザインなんて機能とは全然関係ないのでどうでも良いことなんですが、 何故かこだわってしまいます。そして「デザインがいい」こと以外のCobaltが 気に入っている理由というのは人によってかなり違います。 ・簡単にサーバが出来そうだから ・サーバとしては小型で置きやすいから という実用性重視の人もいれば、 ・MIPS CPUにLinuxを載せるという技術的に挑戦的なことをやっているから、 という技術的興味本意の人もいます。本当に技術的にはすごく頑張ってるんですが、 それをひけらかす事なく「使いやすさ」のためにサラッと活かしている所がまた イキですね。 つまり多くの人は、そのセンスにひかれているのです。なにしろCobaltの実質的な デビューは1998年の2月のDEMOだったそうですからね!SOHO's REPORT の読者なら、 そのデザインを見るだけで、秘められた機能の、そのセンスの良さを即座に理解して 貰えると信じています。 (外観などは Cobalt社 http://www.cobaltnet.com/ をチェック) □ Users Group Users GroupはWeb、メイリングリストを通じて、活発に活動しています。日本で 何故か定着しつつあるコバQというQubeの愛称はユーザーズグループが名付け親 です。メイリングリストには現在350人を越えるメンバーが登録されており、 販社の方をはじめとして、まだCobaltのオーナーではない人まで、幅広い方が 情報交換をしています。皆様も是非一度御参加下さい。 Cobalt Official Users Group http://cobaltqube.org/index-j.html P.S. このユーザ会サイトも Cobalt で動かしています。その実体はCobalt社のAsia Pacific 営業担当のDesaさんから送られてきたCobalt社のエンジニアのサインが 入ったQubeです。僕らの宝物です。 初手から脱線してしまいましたが、次回からは Cobalt の実態に迫りたいと おもいます。 =========== 第二回 前回は趣味に走り過ぎました。今回こそは製品や性能について書こうと思います。 □ 製品 Cobaltの主力製品は現在二種類あります。ひとつは一辺20以下の青い立方体、 Qubeです。もうひとつは19inchラックに収まる厚み僅か45mm のRaQ です。 今日はまずそれぞれの製品の典型的な利用例をあげてみましょう。 QubeはまさにSOHO向けの商品です。OCNエコノミーなどによる専用線を引いて、 そこにYAMAHA RT50などのルータをつないで、あとはQube一台と、MacでもWiPCでも いいですから手元のパソコンを接続し、設備としてはこれでOKです。機体が非常に 小さいので、ルータの横にでもちょこんと置いておけば邪魔になりません。 あとはQubeがDNS,WWW,emailサーバを引き受けてくれますから、自前のドメインを 取って、各種の設定を施すだけで、そのドメインのWWWサーバ、電子メイルが扱え ます。無闇に高価なNTサーバを買う必要もなく、難解なインストールから始め なければならないPC-Unixと格闘する必要もないのです。 RaQにはファイル共有機能がありませんが、超簡単運用サーバとしてISPにとって レンタルホストなどの決定打となる可能性を秘めています。 バーチャルホスト機能も持ち、一つのネットワークラックに40台以上格納できます から、うまくサイト配置ができれば40 CPUの大型マシンに匹敵する仕事ができます。 普通のPCサーバを40台も預ろうと思ったらどれだけの場所と電力がいるか考えて みてください。RaQの消費電力はせいぜい一台あたり30Wくらいですから、40台 集めたって、UPSは1つか2つで充分です。これって結構すごいことですよね。 今回は説明しませんでしたが、キャッシュサーバに特化した製品もあります。 1999年は更に幾つかの新製品が予定されていると聞いています。楽しみにしていて 下さい。そしてこれらの製品は全て Web 経由の簡単な設定で扱えるのです。 ユーザーズグループの鎌田さんによる、初期設定実況ページもご覧下さい。 http://www.auetech.aichi-edu.ac.jp/‾tkamada/cobalt/ □ 性能 Cobaltはその機体の小ささやデザインの秀逸さのために、非常に目を付けられやすい ようです。しかし逆にオモチャっぽく見えるせいでしょう、本当に大丈夫なのか? と言う疑問も湧くようです。安心してください。太鼓判を押します。 一時期、Silicon Cafeの協力を得て、G-TOOLをQube1台で提供したことがあります。 G-TOOLの人気は高く、軽く50万ヒット/dayを稼ぎます。1.5Mbps 回線上で800Kbps を 越える転送量ですが、メモリを16MBから32MBに増設しただけのQubeでさばき切り ました。もしWWWサーバとしての能力を心配するのなら、まずG-TOOLを超える コンテンツを持ってからにしましょう。 よく誤解されますがネットワークサーバにそれほどのマシン性能は要求されません。 CobaltのCPUはPentium 100MHz程度に相当する性能のMIPSチップですが、1.5Mbps 回線で普通のサービスではこれで充分です。メモリも標準の16MBから64MBまで増設 可能ですが、滅多なことでは必要ありません。 その証拠にUsers Groupのサイトcobaltqube.orgも、16MBのままで運用を続けて います。 □ Cobalt社訪問 先日ユーザーズグループの出張隊(*1)がシリコンバレーのCobalt 社を訪問しました。 彼らは熱烈歓迎をうけ、出社していた社員全員とピザパーティのランチを食べた そうです。Cobaltはまだまだ小さな会社ですが、その立ち上がり時期に出会えた ことは非常に幸福なことです。やっぱりコンピュータの世界はこうでなきゃいけま せん。最近ワクワクすることが少な過ぎます。 Cobalt社ではプロトタイプ製品を幾つか見せてもらえたそうです。ああっ、僕も 行きたかった! (*1) 圓尾、中西、川崎とユーザーズグループUS支部の佐々木。 =========== 第三回 今回は少し技術的なことを書こうと思います。 □ CobaltはLinuxマシンか? いまだに多くのエンドユーザにとって、ネットワークサーバの環境構築・運用は かなりの試行錯誤と時間を要求される難事業です。サーバのOSには、Unixや WindowsNTといった、使い慣れないものが必要になることがその理由の一つで しょう。今注目を集めているLinuxはSOHOなど小規模なネットワークサーバに よく利用されますが、これもUnixの一種ですから設定はそれなりに難です。 ただでさえ多忙なSOHOユーザに新しいOSに慣れろという事自体そもそも難ありです。 かく言うCobalt もその中身はLinuxですが、すでに全てのサービスがインストール された状態で出荷され、全ての設定作業をWeb経由で行なうために、Unixに関する 技術的な知識ゼロのままで、安全確実に運用できます。 例えばユーザ登録は購入したCobaltのWebページにアクセスして、ユーザ管理ページの フォームの各項目を埋めてクリック一発で完了です。各種ソフトのバージョン アップ、OSのパッチもWebで同様です。各ユーザのWeb領域のバックアップ、レストア が同じくWeb経由で、またユーザ自身で随時行なえることや、WWWのアクセスログ、 CPU利用率、ディスク消費量などの統計レポートを作る機能も用意されていることも 見逃せません。各種のサービスが何らかの理由で停止してしまった場合は管理者 宛てにメイルを送って報告してくれる監視機能もあります。 これらCobaltが用意しているサービスは本来Linuxには無いものばかりです。つまり Cobaltが提供してくれるのはCobaltの独自の機能です。CobaltはそのためにLinuxを 道具として使っているだけなのです。 □ いじりがいはあるか? 簡単設定でどうしても気が済まないマニアックなユーザにとっても、Cobaltは 非常に面白いマシンとなるでしょう。telnet login すれば、そこは普通のRedHat Linuxの世界です。開発関連のコマンドは一通りそろっていますし、gccもあります。 多くのフリーソフトがUsers Groupでもインストールされています。 例えば現在のCobaltにはメイリングリストの機能がありません。(米国ではどうも メイリングリストは流行ってないみたい。)僕はUsers Groupのメイリングリストの ために、FMLをインストールしました。日本語全文検索機能を載せた人もいます。 これは内部がLinuxだから出来ることです。Cobaltも、足りない機能をユーザや 二次販売店がカスタマイズして販売できるように、開発環境を残しておいてくれて います。技術的な質問にも積極的に答えてくれています。Wistle社のInterJetという 似たようなBSD OSベースの製品(NTTとRICOHが国内でも売っています)がありますが、 これは全く手を入れられないとのことです。楽しくないなあ。。 Cobaltのこのあたりの開放政策の思いきりは気持ちがいいほどで、ftp.cobaltnet.com でカーネルソースまで公開しています。QubeにはPCIバスがありますから、新しく ドライバを組み込んでデバイスを接続することも出来るでしょう。 □ この先どうなるのか? 僕にはCobaltが成功するか失敗するか、良く判りません。ただいずれにしてもこの先 同種の製品が幾つも現れると考えています。サーバもパソコン同様エンドユーザに とって使いやすいものにならなければならない、それが絶対だからです。本物の サーバが使いやすい形で提供される事が大切です。Cobaltは明確にそれを指向した 最初の製品だと考えています。 小規模なサーバが小さな情報を分散して提供する姿こそネットの本来の姿です。 未来もここにあります。今はまだこの点が余り注目されませんが、SOHOの皆さんは その最前線にいるわけです。僕は技術が世界を変えると信じており、個人的には この指向性をもつ全ての製品を応援したいと思ってます。 だから今はCobaltを応援します。1999年は幾つか新製品を出すとCobaltは言って います。期待しましょう。(Copyright Y. Yasuda.)